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The Designable Workers

井垣孝之(NPO法人GeniusRoots代表理事/弁護士)の個人ブログです。会社員・起業の両方の良さを持つ新しいワークスタイルを創る試行錯誤を記録します。

4つの事業を立ち上げた経験からわかった、複数の事業を持つメリットデメリット

次世代のワークスタイル

 私は、2014年に一度に4つの事業を立ち上げました。

弁護士業、新しいワークスタイルを実現するためのプラットフォームを創るNPO法人、法学の学習方法を教える株式会社、主に資産管理用の合同会社を全部設立からやり、法律事務所に所属して弁護士業もやっていました。

各法人の実践的な使い分け方についてはまた今度まとめてみたいと思いますが、実際に複数の事業をやるとどうなるかについて書いてみようと思います。

まずは苦労したことから。

 

複数の事業を持つ3つのデメリット

 一度に4つの事業を立ち上げた結果、とりあえずストレスでえらいことになりました。

首と太ももはガッチガチになり、発熱したと思ったら風邪と細菌感染でやられていて、さらにインフルが合併しました。

 

 

もともと身体はあまり強くないので、相当無理をしていたんだろうと思います。

具体的なデメリットは以下のとおり。

 

①リソースが不足しまくって勢いが落ちる

事業を立ち上げた当初は、当然ほとんどすべてを自分でやらないといけないのでリソースは不足します。それだけでなく、創業期のタスクというのは質/量ともにまったく読めないこと、いきなり問題が降りかかってくることというのも相まって、常にリソースは0の状態でした。

パソコンでいうと、メモリが足らなくて常にHDDがカリカリいってるような状態になります

この状態になると、事業のスピード感というかモーメントがかなり落ちます。立ち上げ時の勢いというのは結構大切で、それだけでそれなりに売上が立ったりします。それが損なわれたのは痛かったなあと思います。

②複数の事業を持つだけで精神力が削られる

 これは実際にやってみて初めてわかったことですが、異なる事業を持つと、それだけで精神力が削られます。ほとんどの場合、事業が異なると頭の使い方が変わるため、頭の切り替えだけで精神力が持っていかれるのです。まるで呪いの防具みたいに。

たとえば、弁護士業で複数の事件を抱えていても別に大丈夫なのですが、弁護士業とNPO法人の事業という組み合わせはヤバいです。

他にも、同じ事業でも意思決定系の仕事と作業系の仕事を同時にやるとかなり削られるということがわかりました。

③意思決定できる量の限界に突き当たる

経営者の重要な仕事のひとつは、意思決定することです。*1

しかしどうやら、脳は1日に意思決定できる量に制限を設けているようです。

事業立ち上げ期は決めないといけないことが山ほどあります。しかし、意思決定できる量をオーバーすると、めちゃめちゃ意思決定の精度が下がります。後で「え、俺何考えてたの!?」と思うようなことをやらかします。

そのおかげで、今オフィスには全く使っていないパイプ椅子が20脚あります。*2

 

 スティーブジョブズは毎日同じ服を着ていたそうですが、その気持ちがとてもよくわかるようになりました。「今日は何を着たらいいだろう?」と考えることすらもったいなくなるんです。

 

当時の私を、知り合いの経営者は「皿回しが必死でたくさんの皿を落ちないように回してるみたい」と表現しましたが、実に的を射ていたと思います。 

 

もちろん、悪いことばかりではありませんでした。

 

複数の事業を持つ4つのメリット

①少額でも複数の収入減があると安定する 

1つの事業から月額40万円受け取るのと、4つの事業から月額10万円ずつ受け取るのとでは、後者の方が圧倒的に安定します。

事業が1つだけだと、突然キャッシュが足りなくなって役員報酬を受け取れなくなり、生活が立ち行かなくなることが普通にありますが、事業が4つあれば、1つ2つ事業がうまくいかなくなっても、なんとか生活していくことはできます。

 

今は突然大企業でも破たんするご時世ですから、こういったリスクヘッジをしておくととてもメンタルが安定します。

 

②ただのアイデアをとりあえず事業という形にするまでを一通り学べた

どんなに素晴らしいアイデアでも、それだけではただのゴミです。

イデアは、商品という形にして、その価値を顧客に伝え、対価を受け取って初めて意味を持ちます。

イデアを事業にするには、概ね以下のモデル(私はビジネスサイクルモデルと呼んでいます)の各要素をすべて考えて実行する必要があります。

 

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(NPO法人GeniusRootsのHPより引用)

上図の5つの要素に加え、マーケティングやタスク管理といったスキルを身につけることも必須ですが、ただのアイデアを価値に変換するプロセスを身につけることができました。

 

③段取り力がめっちゃ上がった

創業期の経営者というのは、事業の中で発生するタスクのうち、他の人がやってくれるものを除いた残りを全部処理しないといけません。処理しなかったものがあれば、そのツケは全部自分に回ってきていずれ爆発します。

リソースがなかろうが、とりあえず目の前に見えているやらねばならないことは全部片づけないと前に進めなかったため、日々のオペレーションをものすごくきっちり回せるようになりました。

「後で余計な仕事をしたくない」という一心で、将来どんなタスクが発生するかを予測し、いつそれを処理するのが楽でかつ効率的かをいつも考えていました。

マネジメント能力は相当鍛えられたのではないかと思います。マネジメントというのは、結局のところ限られたリソースをどう有効活用して成果を出すかというスキルなので、リソースがなかったからこそ身につけられた産物ですね。

 

④事業をしていなければ出会えなかった人たちと会えた

事業をやっていると、必ず人とのつながりが生まれます。

お客さんだったり、取引先だったり、同業者だったり。

異なる事業ドメインの事業をやると、出会う人の種類が全然変わってきます。それぞれの事業をやっていなければ確実に出会っていない人たちと会うことができました。

一部の人は、毎月一緒にイベントをやったり、遊びに行ったりする関係になっています。

4つのメリットの中でも、人とのつながりという財産が得られるのが一番大きいかもしれませんね。

 

今の悩み

今はさらに増えて6足くらいの草鞋を履いていますが、相変わらず自分のリソース不足は悩みです。特に、事業のメンテナンスを怠って機会を逃していることがわかるのがつらいです。常に「あーあれやらないと・・・」という思いがつきまとっています。

また、各事業のオペレーションを徹底的に効率化してしまったため、人を増やすことができません。人を増やしてもそもそも仕事がないのと、仕事を増やそうと思っても自分にそのリソースがないというジレンマに陥っています。

この壁を打ち破らないと、いつまでも創業期を抜け出せないというのはわかってるんですけどね。

 

最後に

とりあえず、一度に4つの事業を始めるのはあまりオススメしません。事業をやりたいならまずは1つから始めましょう。

けれども、なんらかの形で一度極限まで自分を追い込んで初めて学べることがあると思います。人に追い込まれるのではなく自分で自分を追い込むのがポイント。人に追い込まれると病みますから。

 

やりたいことを自分で形にして、好きなように働くワークスタイルを、私はDesignable Workingと呼んでいます。なかなか大変ではありますが、楽しいです。

一緒にこういった働きかたをしたいと思える人、そして現実にこういった働きかたができる仲間を増やしたいですね。

*1:さらに言えば、「今、何を決めるべきか」を決めるのも重要な仕事です。

*2:当時は「オフィスでセミナーやりたいから椅子を買おう」と思って買ったものの、そもそもオフィスでセミナーをやることはほとんどなかったし、普通にメンバーが使う用の椅子を集めるだけで足りた。